「誰でも、簡単に」の罠

書店に並んだビジネス書を見ると「誰でも簡単に」「たったこれだけで」といったタイトルの本を見かけます。難解な本は好まれないご時世ですから、そんなタイトルの本が増えるのもわかります。でも本当に簡単なのでしょうか?

手に取ってみると本当に簡単なことが書かれていて、効果のほどは疑問に思わざるを得ない本もありました。簡単といいながら全然簡単でない本も。

何かのスキルを習得するときに、簡単に理解できる部分とそうでない部分が混在しています。それらが分解可能であれば、まずは簡単なところから手を付けるという方法が良いと思います。でないと、覚えるまでにイヤになってしまいますからね。

自転車の乗り方を例にとると、補助輪を付けたりと初心者が乗れるようになるための補助具があります。特に子供が自転車に乗れるようになるために、ペダルを漕ぐための脚力が必要になるのですが、子供の成長によってはまだその力がありません。補助輪を付けることで倒れることなく自分の体重を含めた重たい自転車を前に進める脚力を徐々に付けさせるための道具だと考えられます。

最近はペダルのない子供用自転車が売られているようです。こちらは脚力が着く前に自転車にまたがってバランスを取りながら進む能力を優先して覚えさせるアプローチでしょう。最初は両足を地面に付け、蹴って進むだけなので、転びそうなったら足で立つことができます。それを繰り返して遊ぶことで徐々にバランス感覚を養います。

自転車に乗るにはペダルを漕ぐこと、バランスをとることの2つの能力が必要です。初心者にこの複雑な動きを一度に教えようとすると、習得する難易度が上がってしまいます。そこでいくつかのパーツに分けて、順番に教えることで習得が容易になるということです。

いずれのアプローチも、複雑な運動の習得を、容易な練習方法に分解しています。それでも本人の努力は必要なのです。筋力が着くのも多少時間がかかりますし、バランス感覚を養うのも同様です。

コーチングの技術を覚えるのも同様なのです。複雑なスキルを一度に覚えようとすると難易度が上がります。特に質問と傾聴のスキルはコーチングを行う際に同時に使うことになるのですが、教える順番を間違えると初心者はより複雑に感じてしまうでしょう。

『コーチングの風景』では、この辺りの初心者の気持ちに即して、より心を砕いて制作しています。しかし、一番大切なのは本人の努力です。複雑なことを容易にする工夫はしておりますが、正直に申し上げて「誰でも簡単に」とは言えないと思います。スキルの習得にはそれなりの時間が必要なのです。それでも習得するだけの価値があることは保証しますよ。

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